第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
ぐんぐん下に向かって泳いで行くと、白く輝く石が敷き詰められた底に辿り着いた。
案の定奥に続いている様で、五人は奥へと進む。
少しだけ横に進むと、泉は上へと向かって曲がっていた。
水面が有るのか、波紋の様な光が水中に射し込んで揺らめいている。
そのまま光の方へと進めば水面から顔を出した。
「これまた…凄い所に出ましたねぇ。」
目の前に広がるのは白く輝く大きな水晶。
一体何年かければこんなに大きくなるのか、と聞きたくなる程大きな水晶が岩壁から突き出ている。
水晶が放つ白い光は太陽の様に暖かく穏やかだった。
(これが太陽の正体。…流石に外じゃないか。)
水面から顔を出したままぐるりと一周見回すと、未だ薄暗い洞窟の中に居る事が確認出来た。
よく見ると洞窟の奥に扉の様な物が見える。
莉蘭は泉から上がるとそちらへ向かって歩いて行った。
扉までは大した距離は無く直ぐに到着した。
目の前にして見上げると、その重厚感が伝わってくる。
大きさは煌帝国の城門と同じくらいだ。
これは一人では開けられないだろう。
ぼーっと眺めていると、背後から玲明が声を掛けてきた。
「莉蘭様、我々は一度引き返そうと思うのですが、如何なさいますか?」
言葉の雰囲気的には莉蘭が残れば玲明も残るといった感じだった。
敵がいないとは言え、自分が此処に残っても足手纏いになりそうである。
「そうですね…私も一緒に戻ります。」
「分かりました。私も莉蘭様と共に参りますので。」
玲明は爽やかな笑顔を浮かべると、部下の人達三人に此方に残るよう指示を出す。
女性なら皆惚れ惚れする様な笑顔だが、別に鼓動が早くなったりはしなかった。
考えてみればドキドキするのは紅炎関係の時が多い。
自分の感覚はいよいよ可笑しくなってしまったのだろうか。
『惚れさせてやる』
低く囁かれたあの声は今も耳に残っている。
莉蘭は初めて会った時の事を思い出して急に顔が熱くなった。
彼が何処まで本気で言ったのかは分からないが、この短期間で紅炎に対する印象はがらりと変わってしまった。
あんな無愛想な人を可愛いと思ってしまうくらいに、大きく。
自分はこんなに単純な人間だっただろうか。
(何か、あの人の思惑通りになってる気がするんだけど…)
莉蘭は少し納得出来ずにいた。