第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
凛花が出て行くと、入れ替わりに紅炎が入って来た。
如何やら会議は終わったらしい。
その後ろには紅覇やジュダルもいる。
「体調はどうだ。」
「お気遣い痛み入ります。もうすっかり良くなりました。」
先程凛花から聞いた話の所為で、内心はちょっと気不味い。
然し莉蘭はそれを悟られない様にして紅炎を見て微笑んだ。
すると、紅炎の纏っているぴりぴりした空気が少しだけ柔らかくなる。
心配、してくれていたのだろうか。
「本当にもう大丈夫なの?」
紅炎の後ろから覗く顔はどこか不安気だった。
如何やら相当心配をかけてしまったらしい。
まあ、何も聞かされずにあの場に遭遇したのだから無理も無いだろう。
「はい、大丈夫です。」
莉蘭が笑って答えると、紅覇も「よかった〜」と言って笑った。
「ほら、ジュダルも謝っときなよ。その為に来たんでしょ。」
紅覇の声にジュダルの方を見ると、不服そうな顔をしたまま扉の横に立っていた。
どう見ても謝りに来た人の態度では無いと思うのだが、一応謝りに来たらしい。
莉蘭は思わず苦笑いを浮かべた。
ジュダルはちらりと紅炎の方を見てびくっと体を震わせてから、これまた不服そうに「さっきはやり過ぎた」と言った。
目は外方を向いている。
不思議に思った莉蘭が紅炎を見ると、ジュダルのことを物凄い形相でにらんでいた。
まるで悪さをした弟を叱る兄だ。
「ジュダルさんは悪くありませんよ。油断した私が悪いんです。それに試合なんですから怪我もしますよ。」
莉蘭がそう言って笑うと、紅炎がこっちを向いて睨んできた。
何故睨む。
そして怖い。
…いえ、原因は分かってます。
怪我する程無茶した私が悪いんです。
すみません。
「でもさ、あの時のあれ何だったの?急になったからびっくりしたよ〜。」
緊張していた空気が紅覇のお陰で少し薄れ、莉蘭は心底安心した。
そしてそのまま流れに任せて話題を逸らした。