第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
「へぇ、やるな。でもさ、俺が自由だってこと、忘れてるぜ。」
そう言うとジュダルは莉蘭目掛けて杖を構える。
______やばい
ニヤリと笑ったジュダルを見て瞬時に何をする気か理解した。
「この距離なら、流石に避けられねぇよな?」
莉蘭は攻撃を避ける為、距離を取ろうと空中に跳んだ。
然しそれは間に合わず、至近距離で攻撃を受けることになる。
「ラムズ。」
ジュダルがそう唱えると、杖の先から雷が溢れ出す。
それらは全て莉蘭目掛けて集まってきた。
「______っ!!」
喉から出た悲鳴が声に成ることは無かった。
直撃を受けた莉蘭はそのまま地面へ倒れこむ。
辛うじて意識は有るものの、体は痺れて動かなかった。
皮膚は所々に裂傷が出来ていて、傷口からは少しだけ血が流れている。
結果は莉蘭の負け。
紅覇は試合終了の合図と共に側に駆け寄り、動けない莉蘭の体を起こしてくれた。
「莉蘭!大丈夫⁉︎」
莉蘭は大丈夫だと答えようとしたが、舌が痺れて上手く回らず、結局曖昧に微笑んで答えた。
例え話せたとしても、この状況は大丈夫には見えないだろう。
ジュダルは少し離れた場所で溜息を吐くと、隠しもせず盛大に舌打ちを溢していた。
「ちっ…面倒くせぇ…」
(いやいやいや、流石に本人の前くらいでは抑えようよ。てか、今この人面倒くさいって言ったよね。)
ジュダルの口からボソッと呟かれた声を莉蘭は聞き逃さなかった。
まあ、負けたのは此方だから別に責任を取れとは言わないが、流石に面倒くさいと言われると腹が立つ。
紅覇が一生懸命起こしてくれている時、やり過ぎたかと頭を掻くジュダルの後ろに人影が見えた。