第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
煌帝国に来て数週間が経過したある日のこと。
その日も莉蘭は紅覇と共に鍛錬に勤しんでいた。
そこにとある人物が訪れる。
「莉蘭って奴はどいつだ?」
名前を呼ばれ振り向くと、そこには長い黒髪を三つ編みにした男の人が立っていた。
「あれ、ジュダルじゃん。如何したの?」
「おう、紅覇か。莉蘭って奴居るか?」
如何やら自分を訪ねてきたらしいその人は、黒いズボンに胸の辺りしかない服、首元には白い布、首や両腕には金の装飾品が沢山着いていた。
全体的な黒の中に、怪しい光を宿した赤い瞳が二つ覗いている。
婚儀の挨拶では見かけなかった人だった。
こんな印象的な人、一度見たら忘れられないだろう。
「あの、私が莉蘭ですが。」
只者ではない雰囲気の人物に、莉蘭は恐る恐るといった様子で手を挙げた。
「へぇー女か。お前強いんだろ?俺と勝負しようぜ!」
凄く無邪気な笑顔で闘い挑んでくる彼に、莉蘭は戸惑いを隠せずにいた。
如何しよう、と一度考え、一体この人は誰だろう、と思い至る。
「あの、何方様でしょうか。」
「あぁ?お前俺のこと知らねぇのか?」
「申し訳ありません。」
そんなに凄い人なのだろうかと思いつつ、式の時は居なかったことに首を傾げて紅覇を見た。
「うちの神官。ジュダルだよ。」
そう言って紅覇が紹介すると、ジュダルは得意げな顔をしていた。
「へぇ、神官様ですか。……神官⁉︎」
莉蘭は弾かれた様にジュダルを見て、何てことだ、と慌てふためいていた。