第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
ところで話は変わるのだが、最近この仏頂面が可愛く見える時がある。
先程のお茶の話もそうなのだが、つい最近もこんな事があった。
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「最近白龍と仲が良いらしいな。」
「そうですね。鍛錬に付き合っていただいているうちに自然と。」
莉蘭がそう答えると、紅炎は「そうか」とだけ言って話を切り上げた。
最初は、何故そんな事を態々聞くのだろうか、と不思議に思った。
別に話を広げる訳でも無いし、お互い会話に困っていた訳でも無い。
紅炎はこの時何事も無かったかの様に読書に戻ったのだが、よく観察して見ると少しだけ眉間に皺が寄っていた。
それは少し不機嫌になっている時の合図だ。
______まさか
「妬いてるんですか?」
莉蘭が小声で呟くと、紅炎はジト目で此方を睨んできた。
図星、なのか?
予想するにだが、紅覇か誰かに「あの二人は最近仲が良い」とでも聞いたのだろう。
気になって聞いてみた。
きっとそんなところだ。
「白龍さんは兄弟みたいなものですから。」
と莉蘭が何となく言い訳すると、「何の話だ」と言って紅炎は益々眉間に皺を寄せた。
然し此方からは何も言わず、ただ微笑みだけを返す。
すると紅炎は「気色悪いぞ」とだけ言って読書に戻った。
その眉間には先程の様な皺は無い。
______素直じゃないな
そう思いながらも、心の何処かで可愛いと感じている自分がいた。
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紅覇が言っていただけなのだが、自分は紅炎にとっての"お気に入り"らしい。
最初のうちは何を意味するのか理解出来なかったが、あまり紅炎を構わない日が続くと機嫌が段々悪くなっていくのを知り、何となく"お気に入り"の意味を理解した。
それからというもの少しだけ意識するようになり、「この人を好きになれるかも知れない」と考えている今日この頃である。