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マギ 〜その娘皇子の妃にて〜

第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む


あの日からというもの、殆ど毎日のように紅覇や白龍と鍛錬を重ねている。
一日につき凡そ二時間くらいだが、それでもその時間はとても楽しかった。

白龍とも大分打ち解けて、以前の様な気まずさは感じない。
寧ろ楽しいくらいだ。

この頃の莉蘭は鍛錬を終えると風呂へ入り、汗を流してから紅炎の書斎でお茶を淹れるのが日課となっている。
最近は面白い本を書斎で発見し、それを紅炎の側で読むようになっていた。
以前のように互いが話さなくても居心地が悪くなるようなことは無い。

紅炎を訪ねて来た家臣の人達も、莉蘭が其処に居ることが当たり前になり始めていた。

「此処での暮らしは慣れたか。」
「ええ。皆さん仲良くして下さいますから。毎日楽しいですよ。」

莉蘭がそう言って微笑むと、紅炎も「そうか」と言って微笑む。
そんな時間に、莉蘭は少しの幸福感を覚えるようになっていた。

最近は紅炎が笑うと何だか自分まで嬉しくなる。

一緒に居て分かったことなのだが、紅炎はあまり笑わない。
嘲笑、と言うのだろうか。
その類のものは多々あるのだが、人と話していても常に真顔なのだ。
だから時折見せる微笑みがとても貴重なものに思えるのである。

紅覇が以前、「炎兄って時々何考えてるか分からないんだよねぇ」と話していたことがあった。
確かに莉蘭も少し前まではそう思っていたし、初対面の時の印象があまり良くないから苦手意識も強かった。

然し今は違う。

仕事の時や客人の相手をしている時などは見たことが無いから分からないが、書斎に出入りするようになってからここ数日、莉蘭は練紅炎という人間を観察していた。

そこで出た結論は、「分かり難いだけであって分からない訳じゃない」だった。
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