第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
暫く休憩していると呼吸も大分楽になってきた。
最悪の場合は笛を吹くことも考えたが、これなら必要も無さそうだ。
因みに、ミュラに貰った笛は現在莉蘭の右耳にイヤリングとして付いている。
最近は殆ど使わないからもう飾りみたいな物だ。
「もう大丈夫です。御心配をおかけしました。」
「もう宜しいのですか。」
「はい。」
そう言って微笑むと、白龍は「良かった」と言って微笑み返してくれた。
その笑顔に先程の様な警戒の色は無い。
何だろう、一戦交えて距離が近づいた気がする。
これはチャンスかも知れないと思い、莉蘭は思っていたことを切り出した。
「あの、もっと気楽に話して下さって構いませんよ。年も近いでしょう?」
「しかし、貴方は紅炎殿の…」
「そういう気を回さなくて良いように、紅炎様も貴方方にお願いされたのでは?」
莉蘭がそう言って微笑むと、白龍は渋々了承してくれた。
成る程、紅炎達が頑なに譲らなかったのも分かった気がする。
「では、莉蘭殿もそうして下さい。」
「莉蘭でも良いですよ?」
「それは流石に…」
「ふふっ、冗談ですよ。」
白龍は意外と素直な良い人かも知れない。
会った時はこれから先上手くやっていけるか心配だったが、如何やら問題なさそうだ。
嬉しくなった莉蘭は、紅覇の存在をすっかり忘れて談笑していた。
「莉蘭〜僕のこと忘れてない?」
「ひゃぁっ⁉︎」
紅覇が突然抱き着いてきたので変な声が出てしまった。
然も物凄く顔が近い。
「わ、忘れてませんよ。」
「嘘だー。」
「紅覇殿、莉蘭殿が困ってます。」
そのまま三人で少し談笑した後、今度は互いに手加減しながら組手をした。
その日は随分と充実した一日だった。