第1章 序章
暫くして書斎にやって来たミュラは、莉蘭の容態が安定した事を告げる。
その頃には莉駿も落ち着いていた。
ミュラに連れられて寝室に入ると、莉蘭はベッドに横になってすやすやと眠っている様だった。
二人が椅子に座ると、ミュラは莉蘭の現状について説明を始める。
簡単に纏めると、今回の件の原因は、莉蘭の中にあるマゴイの暴走との事だった。
今は魔法で眠らせているが、明日には眼が覚めるとのことだ。
取り敢えずは無事だと言う言葉に、莉鎧も莉駿も自然と安心の息が溢れた。
「元々、莉蘭様はマゴイの量が多く、その所為もあって時折体調を崩されていました。今回山賊に襲われたことにより、眠っていた力が解放されてしまった様です。本来ならば歳を追うごとにゆっくりと解放されていくはずの力です。彼女は未だ幼い。その為、力の制御が出来ず暴走させてしまったのでしょう。」
制御の利かなかった力は必要以上に発揮され、体内にあるマゴイを瀕死寸前まで消費してしまったのだろう。
詳しくはないが、それなりに魔法の知識が有る莉鎧はそう考え、納得した。
然し、魔法を学んでいない莉駿には難しい様で、不思議そうな顔をして父を見ている。
莉鎧は優しく微笑むと、愛しい息子の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「現在は私が施した魔法により力は抑えられていますが、解放された力は元には戻りません。今後は、力を抑えながら、彼女が成長するのを待つしかありませんね。」
付け加えられた説明に、莉鎧は「そうか」とだけ言うと、莉蘭の側に寄って気持ち良さそうに眠る彼女の頭をそっと撫でた。
莉駿はその様子を黙って見ていた。