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マギ 〜その娘皇子の妃にて〜

第1章 序章


書斎に戻ると、莉駿は未だその場に座ったまま家臣の者に腕の手当てをされていた。
然しその視線は床に釘付けにされており、瞳には影が差している。
余程恐ろしかったのか、青白い顔をしていた。

手当てが終わったのを確認すると、莉鎧は人払いをし、莉駿を優しく抱きしめた。

「何があった。」

莉鎧が尋ねると、莉駿は大きく体を震わせる。
そしてゆっくりと話し始めた。

「山からの、帰り道、山賊に襲われて…俺、腕を切られて、そしたら、莉蘭が……俺が、弱かったから…っ、」

そう言って莉駿は言葉を詰まらせ、泣き始めた。
今回の件を自分の所為だと酷く悔いている様だ。

そんな莉駿の背を、莉鎧は宥める様にゆっくりと摩る。

「お前は莉蘭を連れて帰って来てくれた。お陰で、未だ助かる可能性が有るんだ。妹をちゃんと山賊から守った。良くやった方だよ。」

莉鎧の言葉に、莉駿は勢いよく顔を上げた。
その瞳は涙で濡れており、顔は酷い有り様になっている。

「でもっ‼︎俺、結局…莉蘭に守られた!」

余程悔しいのか、それとも涙を抑えようとしているのか、莉駿の眉間には皺が寄っていた。

それを見た莉鎧は一瞬言葉に詰まる。
何故なら、彼の気持ちも分からなくはないからだ。

「…お前が莉蘭を守りたいと思う様に、莉蘭も、莉駿、お前を守りたいと思ったんだ。大丈夫。今はミュラが付いてる。彼女は優秀な魔導士だから、きっと助かる。」

優しい父の言葉に、先程にも増して泣き出してしまった莉駿を抱きしめながら、莉鎧は娘の無事を祈った。
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