第1章 序章
事件の日から三日後。
すっかり回復した莉蘭は魔法の勉強を開始した。
術を確りと安定させる為にも魔法を学んだ方が良い、と言うミュラの提案に拠るものである。
現在莉蘭に施されている封印術は彼女自身のマゴイで賄われており、マゴイが尽きない限り解けることはない。
然し、念には念をとミュラは自身が開発した魔法道具の笛も渡していた。
この笛は、吹けば先端からマゴイが流れ出す仕組みになっており、魔法を使用しなくてもマゴイが消費出来る様になっている。
これは体にマゴイが収まり切らなくなった時の対策で、緊急時の為の物だ。
力が収まり切らなくなった際、近くにミュラが居れば問題は無いが、何時も側に居られるとは限らない。
幼い莉蘭に難しい事を言っても分からないので、苦しくなったら吹くようにとだけ言ってあった。
莉蘭は事件の次の日から元気に駆け回っていたので、体に問題は無い様だった。
元気なことは良い事で、喜ばしいものだ。
ただ、良過ぎるとまた違った問題が生じてくる。
莉蘭は兄と離れ離れになってしまう魔法学の時間を心底嫌がり、逃げ回ったのである。
然し、初めこそ暴れていた莉蘭も、段々と興味が出てきたのか次第に魔法にのめり込んでいき、それと同時に兄離れもした様であった。
大人しく勉強する様になった莉蘭を、城内の者達は皆暖かく見守ったのだった。