第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
序盤は冷静に分析し、相手の弱点や遣り難いところを探し出す。
後半はそれらを駆使して勝利を掴む。
勿論早めに決着をつけるのが先決だが、出来るだけ相手の動きを一撃で封じるのが鉄則。
その為の観察眼と洞察力を日々の鍛錬で養うべし。
これは蒼家に伝わる武術の心得である。
他にもいろいろ有るのだが、何れもお互いが出来るだけ傷つかない様に、という平和を愛する心が感じられるものだ。
蒼家の者は皆これを基に武術を学ぶ。
それは莉蘭も例外ではない。
______見えた
莉蘭は一気に距離を詰めると、剣を持ったまま宙返りの要領で地面に両手を着き、槍を蹴り上げた。
腕力か脚力かでは勝敗は明らかだ。
槍は白龍の手から離れて宙を舞い、少し離れた地面に突き刺さる。
「なっ⁉︎」
「わぁ〜凄いね。莉蘭って曲芸も出来るんだ〜」
莉蘭は直ぐさま体制を立て直すと、驚いている白龍の首元で剣を止めた。
紅覇は感心して拍手をしている。
莉蘭は剣を収めると両手を合わせて頭を下げた。
白龍も同じ様に頭を下げると、槍を引き抜いて莉蘭の元へ戻って来る。
「凄いね、莉蘭。勝っちゃったよ。」
「お強いのですね。」
莉蘭は否定の意味を込めて片手を軽く振ると、苦笑いを浮かべる。
息切れを起こしていて言葉は出てこなかった。
流石に二試合続けてはまだ無理があったかも知れない。
暫く休めば治るだろうと思い、三人は休憩も兼ねて近くの石に座って休んだ。
「大丈夫?」
紅覇が心配そうに顔を覗き込んでくる。
莉蘭は大丈夫だと伝える為に微笑みを返した。
小さい頃から興奮すると直ぐに息切れを起こし、酷い時にはマゴイが多くなり過ぎて発作を起こした。
最近は全く発作も無いので大事には至らない。