第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
紅覇の斬撃が止むと、次は莉蘭から仕掛けた。
強く地面を蹴り一気に距離を詰め、一度軽く斬りつけてフェイントを掛ける。
そのまま素早く姿勢を低くすると、紅覇の足元を回し蹴りで払った。
「うわぁっ⁉︎」
転んだ紅覇の上に跨り動きを封じると、剣を喉元に添える。
紅覇は莉蘭より背が低く小柄なので、簡単に押さえる事が出来た。
何故か「紅炎ではこうはいかないだろうな」と彼の顔を思い出している自分がいて、慌てて消し去る。
「止め!」と言う白龍の声が響き、それを合図に莉蘭は剣を引いて紅覇の上から退いた。
「あぁーびっくりしたー。消えたと思ったらいきなり足払うんだもん。」
「すみません。紅覇さんが強いからつい。」
莉蘭はそう言うと乱れた呼吸を整える。
流石と言うべきか、紅覇は息切れをしていなかった。
久々の運動だからだろうか。
実を言うと少し苦しかったりする。
然し今はじっとしている時間が惜しく、莉蘭は早く次の試合がしたかった。
「白龍殿、次お願い出来ますか。」
「構いませんが、大丈夫ですか?」
「はい、お願いします。」
元々体を動かすことが好きなので体力には自信がある。
鈍っていた感覚も先程の紅覇との試合で取り戻せたから、次はもう少し効率良く出来るはず。
莉蘭が元気よく返事をすると、白龍は心配しながらも了承してくれた。
剣を抜いて先程の位置に着くと、白龍も槍を構える。
「始め!」
紅覇の掛け声と共に駆け出したのは莉蘭だった。
槍は剣と比べると間合いが長い為、剣の場合、仕掛ける時は確実に相手の間合いに入らなければならない。
早めに間合いを詰めてしまった方が楽だ。
斬りかかる莉蘭に白龍は槍で応戦した。
先程の試合を見ていたからか、体術の方も警戒されている様だ。
荒々しい紅覇と違い、白龍の戦い方は幾分か丁寧に感じる。
中々崩れないガードに苦戦しながらも、莉蘭は相手を観察し続けた。