第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
暫くして、紅炎は一度息を吐き此方を見据える。
何時もそうなのだが、この人は考え込んでいる時も殆ど表情が変わらない。
大体同じ顔をしているから、きっと何を考えていてもその内容は分からないのだろうなと思う。
「…兵の訓練に参加するのは許可出来ん。彼奴らの訓練は少々手荒いからな。それに、お前は王族だ。気を使うだろう。」
「そう、ですよね…」
紅炎の言うことも尤もなので反論はできず、莉蘭は肩を落とす。
言われてみればそうだ。
此処は煌帝国で、莉蘭が今まで育ってきた土地ではない。
周りは見知らぬ人達ばかりで、当然、相手も此方の事を知らない。
それに加えて王族となれば、気を使い過ぎて訓練に支障が出る可能性も高い。
言ってしまえば自分は王族としての自覚が足りないのだ。
今後はもっと自覚を持たなければ。
莉蘭は言い出した自分が恥ずかしくて、あははと笑って誤魔化した。
然し、紅炎は少しして「だが」と付け加える。
「弟達なら、その必要も無いだろう。」
一瞬その言葉の意味が分からず首を傾げたが、少し考えれば理解出来た。
「では…」
「そうだな、紅覇にでも話をしておく。相手をしてもらえ。」
莉蘭は満面の笑みを浮かべると、「有難う御座います!」と勢いよく頭を下げた。
明日からまた鍛錬が出来る。
莉蘭の頭は喜びで一杯だった。
まるで子供かの様に喜び、上機嫌でその後は過ごした。
______そんな様子を見て紅炎が微笑んでいたことなど莉蘭は全く知らない______