第3章 その娘、王族にて政略結婚を為す
懐かしげに回想していると、不意に紅炎が口を開く。
「…ところで、服を直したらどうだ。その格好ではあまり様にならんぞ。」
そう言われて自分の格好を確認すると、胸元は肌蹴ていて、服の合わせからは右脚が確りと見えていた。
暗闇でなければ女としていろいろと危なかっただろう。
莉蘭は慌てて前を合わせベッドから立ち上がって服装を整えた。
「も、申し訳ありません。お見苦しいところをお見せしました…。」
莉蘭は俯きながら小さく謝罪した。
きっと顔は真っ赤だ。
明かりが点いていないことをこんなに有難く感じた日は無い。
「…お茶淹れますね。」
莉蘭がそう言って戸棚に向かって歩こうとすると、急に腕を引っ張られて後ろによろめいた。
堪えきれずにそのまま後ろへ倒れると、ベッドではない何かに座る。
思わず瞑ってしまった目を恐る恐る開けると、直ぐ近くに紅炎の顔があった。
瞬間、莉蘭は硬直し、目を大きく見開いて紅炎の顔を見つめる。
そんな莉蘭を見て紅炎はにやりと笑った。
「そう怯えるな。」
「何故…このようなことを」
見今の莉蘭にはそれを言うだけで精一杯だった。
いろいろ訳が分からず頭がこんがらがっている。
紅炎は随分と楽しそうだった。
「結婚したばかりの初夜を一人で過ごさせるはずがないだろう。まあ、来てみたところでお前は寝ていたがな。」
「…申し訳ありません…。」
まさか紅炎がそんなことを考えていたなんて露知らず、完全に寝るつもりだった莉蘭は申し訳なさに何も言えなくなったのだった。