第3章 その娘、王族にて政略結婚を為す
莉蘭は部屋に着くと明かりも点けずベッドに倒れ込んだ。
ベッドが大きく音を立て、柔らかな布団が体を迎える。
今日一日で気力が磨り減ってしまっていた。
精神的にそろそろ限界だ。
何も疲れているのは心だけではないようで、顔の筋肉が凝り固まっていて痛い。
頬を手でぐりくりと揉み解すと、少しだけ和らいだ気がした。
暫くの間ベッドに倒れた体制でじっとしていると、緊張していた体から力が抜けていく。
三十秒程間を空けてから大きく深呼吸するとベッドから勢い良く体を起こし、莉蘭は服を脱ぎ始めた。
着替えないと折角の衣装に皺が寄ってしまう。
もう殆ど気力と根性だけで動いているようなものだった。
頭の天辺から爪先まで怠い。
______さっさと着替えて寝よう…
黙々と脱ぎ続けると白い薄手の生地だけになり、体が幾分か軽くなる。
髪も解いて適当に櫛を通すと、部屋に置いてあった水と布を使って化粧を落とした。
一連の作業を終えると莉蘭は再びベッドの上に仰向けで倒れ込む。
ぼすっという音と共に体がベッドに沈んだ。
案外これが楽しい。
緊張の糸は完全に切れていた。
今誰か入って来たら「お前本当に女か?」と言われそうなくらいだらしない格好をしている。
______このままじゃ駄目だ、せめて布団を…
そう分かってはいても、心身ともに疲れ切っている体は休養を訴えてきていた。
結果からして言えば、勝利したのは睡魔の方である。
…本当情けない。
莉蘭は横を向き何度か深く呼吸を繰り返すと、布団も被らずそのまま眠りに落ちた。