第3章 その娘、王族にて政略結婚を為す
然しすっきりしたのも束の間、紅玉は物凄い爆弾を投下した。
「貴方、愛されてらっしゃるのねぇ。羨ましいわぁ〜。」
「え?」
「愛」と言う言葉を耳にして、莉蘭の思考回路は完全に固まった。
この方はあまり政治的な権限を持たないと聞くから、政には疎いのだろう。
だから今回の件も政略結婚であることを知らないのかも知れない。
______この結婚に愛など無いのだから______
改めて思うと勝手に自嘲の笑みが溢れた。
期待していないと言っておきながら、少しだけ寂しいと感じてしまっている自分が嫌になる。
紅玉は微笑む莉蘭を不思議そうに見つめていた。
「如何かなさいましたのぉ?」
「いえ、何でも。それより、紅玉様は紅炎様にお会いにならないのですか?」
先程の挨拶の時、「此処に居ない者も何人か居る」と紅炎から聞いていた。
紅玉もその一人だ。
内向的で、こういった宴にはあまり姿を見せないのだとか。
「わ、私は別に!…ただ、貴方に会いに来ただけですわ。」
紅玉はそう言うと外方を向いてしまった。
照れているのが丸分かりである。
莉蘭がにっこりと笑って見ていると、居た堪れなくなったのか、紅玉は「それじゃ」と言って帰ってしまった。
(何か弄り甲斐があって可愛い人だな〜)
夜も更けてきた事もあり、自室に戻る許可も貰っている莉蘭はその後真っ直ぐに自室へと向かったのだった。