第3章 その娘、王族にて政略結婚を為す
翌日の朝、紅炎は本国へと帰って行った。
次に会うのは婚姻の儀の時だそうだ。
日取りは二週間後。
それまでに莉蘭に課されたのはマナーの習得だった。
朝から晩までみっちり詰められた予定に目が回りそうだ。
マナー習得に並行して式の準備が進められ、休憩の合間に服を決めたり、持って行く物を揃えたりしている。
あれは休憩と称した立派な精神の鍛錬だと思う。
あれから変わったことが二つある。
一つは今までの日常が完全に結婚一色に染まってしまったこと。
政略結婚と言っても結婚は結婚。
混乱を避ける為、国民には今回の事情は伏せられている。
よって国中の人が全力で祝福してくれるのだ。
然し当の本人は不満だらけなので少々複雑である。
それに加え、ここ最近は魔法も武術も出来ていないのでストレスは溜まる一方だった。
本当何とかして欲しい。
もう一つは兄との関係。
今までの溝は埋まり切ってはいないが、莉駿が笑い掛けてくれる様になった。
それが何より嬉しい。
それだけを考えれば、紅炎には感謝しなくもない。
…多分。