第1章 序章
莉蘭が六歳になった年のある日、事件が起きた。
その日、莉蘭は莉駿と共に山に遊びに来ていた。
山々を駆け、木の実を食べ、川で遊んだ。
その帰り道、二人は偶々出くわした山賊に襲われ、妹を庇った莉駿は腕に怪我を負った。
絶体絶命の危機に莉蘭の中に眠っていた力が目覚め、そのお陰でその場に居た山賊達は散って行った。
然し、危険が去ってもその力は収まらなかった。
______暴走したのである。
何が起きたのか分からない兄は、ぐったりとして動かない妹を抱え王宮へと急いだ。
「父様‼︎莉蘭が‼︎」
息子の焦り様に異常事態を察知した莉鎧は、血の気の無い莉蘭を見て、直ぐに魔導士を呼ぶよう家臣に指示した。
そして莉駿の側に寄り莉蘭を抱き上げると、その場に崩れて放心してしまった莉駿を残して寝室へと向かった。