第3章 その娘、王族にて政略結婚を為す
それから二日後の約束の日。
その日の朝はすっきり目が覚めた。
眠る前は緊張してなかなか寝付けなかったが、いざ眠ってしまえば爆睡だった。
自分は案外肝の据わった奴だったのだと初めて実感した。
朝から湯船に浸かり、体と頭を洗って浴室を出る。
普段から風呂に入る時は女官達をつけていない為、一人で髪も乾かして服を着た。
鍛錬した後や寝る前など、風呂好きの莉蘭は度々入浴する為、手伝いは無用と断っている。
今日はこの時間が本当の意味で自由になれる最後の時間だろうと思い、莉蘭はゆっくり髪を乾かすと風呂場を後にした。
その後、自室に戻ると扉の前にミュラが立っていた。
「ミュラが朝から部屋に来るなんて珍しい。如何したの?」
莉蘭が声を掛けると、ミュラは丁寧に挨拶をしてにっこりと笑った。
「魔法がちゃんと機能しているか確認しに。変わった処は有りませんか?」
莉蘭は少し考えると首を横に振る。
「そうですか、なら良かった。…あまり緊張はなさっていない様ですね。流石莉蘭様。」
「それ褒めてるの?」
莉蘭がそう言って笑うと、ミュラも同じ様に笑った。
歳は離れているが、ミュラは莉蘭にとって特別な存在だった。
友であり、姉であり、母親代わりでもある。
この人は何時も側に居て笑わせてくれた。
「…ありがとう。」
「何の事です?」
「ううん。何でもない。」