第3章 その娘、王族にて政略結婚を為す
朝食の後の予定は普段とは違い、花嫁修行的なものだった。
王族の人の処に嫁ぐ為、料理や洗濯といった家事は必要無いのかも知れないが、念の為に習っておく。
普段から時々女官の手伝いをやっていた莉蘭は、習う前からある程度の家事は出来ていた。
然し、問題はマナーである。
第一皇子ともなれば、その妻が何時公の場に駆り出されるか分からない。
必要最低限のマナーは王の娘である以上日常的なものの筈なのだが、優しい父や仲の良い女官達に囲まれて育った莉蘭は正しいマナーを知らなかった。
兄と共に武術を学び、今も尚鍛錬を重ねている彼女にとって、「お淑やかに」と言う言葉は無縁だったのだ。
その日から講師付きっ切りでマナーを学び、何とか付け焼き刃の「お淑やか」を身につけた。
要はあれだ、大人しくただ微笑んで居れば良いのだ。
自分は微笑むだけの人形に成ったのだと思えば良い。