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マギ 〜その娘皇子の妃にて〜

第3章 その娘、王族にて政略結婚を為す


話が終って部屋に戻ると、莉蘭はベッドの上に倒れ込んだ。

頭の中が未だごちゃごちゃしている。


______これで良かったのか______

______これで良かったんだ______


そう自分に言い聞かせた。
何時までも続く無意味な自問自答。

父の手前気丈に振舞ってはいたが、一人になると途端に感情が溢れてきて涙が止まらなくなった。


愛するこの国と、家族と離れなければならない。
好きでもない、然もこの国を侵略せんとする国へ嫁がねばならない。

皆を困らせない為にも、誰かに相談する訳にはいかない。
______否、出来ない。


莉蘭の心は寂しさや遣る瀬無さで一杯だった。

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その日はそのまま眠ってしまったらしく、目が覚めた時には日が昇っていた。

何時もは清々しく感じる陽射しが、今日はやけに恨めしく思える。

垂れていても仕方が無いと起きて一番に湯浴みをし、朝食を家族揃って食べた。

家族揃って朝食を摂るのが蒼家の習慣である。
せめて子供達と一日一回は顔を合わせたいから、と言う父の希望らしい。
まあ、話しているのは殆ど自分と莉鎧だけなのだが。
莉駿は食事を済ませると早々と退席してしまうのだ。

朝食の間も莉蘭は努めて明るく、何も気にしていない風に振る舞った。

自分はもう気持ちの整理がついたから大丈夫だ。
そう見せかけた。
その時は皆に心配を掛けさせない様にするのに必死だった。

だがもしかすると、自分自身にそう暗示を掛ける為だったのかも知れない。
そうして気を張っていないと直ぐに滅入ってしまいそうだった。

莉駿は珍しく何か話そうとしていた様だったが、結局何も言わず、何時もの様に早めに食事を済ませ席を外した。

そして、その場に居るのは莉蘭と莉鎧だけになった。

「父様、兄様にあの事は?」
「伝えたよ。あの後にな。」
「そう…。」

知っていて何も聞いてこない兄に少しだけ寂しさを感じた。

昔に比べれば大分兄離れ出来た莉蘭だが、未だに時々寂しさを感じてしまう。

この寂しさは、心の何処かでは未だ期待しているからだろうか。

壊れてしまった関係を、出来てしまった溝を、昔の様に元に戻すことが出来る、と。
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