• テキストサイズ

マギ 〜その娘皇子の妃にて〜

第5章 その娘、妻と成りて恋を知る


「莉蘭の言ってた人、さっき帰ったって。政務官に聞いてきた。」
「え、態々聞いて下さったんですか。」

あれやこれやと二人からの質問の嵐が終わると、紅覇は「僕ちょっと行ってくる」とだけ言って部屋を出て行き、数分して戻って来た。
何故か出て行った時よりも上機嫌で帰って来たので如何したのかと尋ねたが、一向に教えてくれそうに無い。
それどころか、「早く炎兄のとこ行って来なよ」と言って部屋を追い出されたのだった。

現在、紅炎は未だ応接間で休憩中なんだとか。

白瑛は後から部屋を出て来ると、未だ部屋の前で如何しようかと悩んでいた莉蘭の手を取り上機嫌で歩き出した。

「あ、あの!何処に行くんですか?」

嫌な予感がしたので聞いてみると、白瑛は素晴らしい笑顔で「何処って、決まっているでしょう?」と返した。

______いやいや、決まってませんよ!

と言う言葉は白瑛の笑顔により相殺される。

「ちょ、ちょっと待って下さい。未だ心の準備が…」
「こういうのは早い方が良いのですよ。」
「そんなっ⁉︎ムグッ」
「しー。此処からはお静かに。」
「…はい。」

何時の間にか応接間の近くに来ていたらしく、白瑛は叫びそうになった莉蘭の口に手を当てると、人差し指を顔の前で立てた。
その雰囲気に莉蘭は流され、とうとう応接間の前まで到着する。

「…白瑛さん、入らないんですか?」
「しー。静かに。」
「……。」

何故か姿勢を低くして壁際を歩く白瑛に、莉蘭も同じ様にして歩いて行った。
てっきり中に突撃するものだと思っていたのだが、如何やら違った様だ。
白瑛は扉の横でしゃがむと中の様子を伺う。
少しして場所を交代すると、中の会話が聞こえてきた。

「明日……ですが………」

この声は紅明だろうか。
明日の話をしている様だが、少し聞き取りにくい。

「…ちょっと、聞いてるんですか?」

急にはっきり聞こえたと思ったら何処か不機嫌そうな紅明の声だった。
揉めている、と言うよりは呆れていると言った感じだ。

「いい加減機嫌も直ったでしょう…って、何処行くんですか」
「…部屋に戻る。」

『ちょ、白瑛さん!戻って戻って!』
『え、何です?』

近付いて来る足音に慌てて隠れようと白瑛を振り返る。

だが時既に遅し。
扉は開かれる。

「…何をしている。」
/ 121ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp