第1章 緑色のキセキ。
「見に行こう。興味がある。」
「何をだ?」
「神谷るりをだ。もう練習を始めているだろう。」
赤司はそう言うと荷物を肩に掛けた。
「中学選抜といえど、所詮女子だぞ?見に行く必要があるのか?」
俺は赤司を止めるように赤司の荷物を掴んだ。
赤司が彼女を気に入ってしまうのではないかと思うと
怖かった。
赤司だけには勝てる気がしなかった。
「関係ない。どの程度のものか見てみたいだけだ。行くぞ。」
赤司は荷物から俺の手を退けると、
俺の荷物を俺に投げ渡した。
「…。」
俺は赤司と共に女子の体育館へと向かった。
心は穏やかではなく
不安で仕方がなかった。
何故こんなに焦ってしまうのか、
こんなに不安になってしまうのか
こんなにも苦しいのか…
そこでは既に女子バスケ部の練習がはじまっていた。
俺たちはじっとギャラリーからその様子を眺めた。
神谷はいつものように黒く長い美しい髪をなびかせながらコートを走り回っていた。