第1章 緑色のキセキ。
次の日、俺は眠たい目をこすりながら
朝練へと向かう。
昨夜は彼女の事が頭から離れず
なかなか寝付くことが出来なかった。
理由はよくわからないが、
彼女の事を考えると胸がドキドキとし、
顔が火照る。
「…はぁ。」
溜息をつくと、
バッシュに履き替え、体育館へと向かう。
ストレスを発散するように
シュートを何本も打ち込む。
「おい。」
後ろから声を掛けられ、
俺が振り返ると赤司が小さな紙袋を俺に差し出していた。
「…なんなのだよ。」
「先ほど、女子バスケ部の部員が昨日用具を返却に来た生徒が落としたと持ってきた。お前のだろ?」
俺は赤司から紙袋を受け取ると、中を確認した。
中には昨日落とした瑠璃色のハンカチが入っていた。
「…あ。」
おそらくこれを持ってきたのは彼女であろう。
彼女の顔がふと浮かぶ。
胸がドキドキして顔が火照ってきた。
「お前ので間違いないな?」
「俺のなのだよ。」
戻ってきた俺のハンカチは洗ってあるようで
丁寧にアイロンまで掛けられていた。
ゆっくりとハンカチの匂いを嗅ぐ。
うちの洗剤とは違うなんだか甘い匂いがした。
彼女もこんな匂いがするのだろうか…?
そんな事を考えていると思わず顔がニヤけた。
「…お前なにやってんだ。」
赤司が怪訝そうな顔でこちらを見ていた。
「…っは!?な、なんでもないのだよ!?お、俺のか確認してたのだよ!?」
思わず自分の理解不能な行動が恥ずかしくなり、
俺は慌てて紙袋にハンカチを戻し、体育館の端に置くと
誤魔化すように練習を再開させた。