第1章 緑色のキセキ。
しばらくすると神谷が教室に戻ってきた。
少しだけ教室がザワっとした。
神谷は不思議そうな顔をしていたが、
気にしない様子で自分の席についた。
「いたっ。」
彼女がそう呟いた。
まさか画鋲が残っていたのか?
俺は慌てて彼女の方へ駆け寄った。
「どうしたのだよ?」
「あ…えっと…なんでもないです!」
彼女はニコっと笑ってスカートの裾を延ばした。
でも、太ももの部分には
スカートで隠しきれない青あざがあった。
「…それ、どうした?」
俺が指を刺すと、
彼女は焦ったような顔をした。
「えと、私がトロくて…部活中に先輩たちの投げたボールにあたっちゃって…。」
「そう!偶然あたっちゃったんだよね?るりちゃん?」
いつの間にか戻ってきた女子バスケ部の奴が
神谷の肩に手を回してそうかぶせるようにいった。
「そ、そう。私が偶然・・・。」
「…そうか。」
俺はそういうと自分の席へと戻った。
やっぱりだ。
恐らく神谷は部活中も何らかの嫌がらせを受けている。
早くなんとかしなければ…。
俺はその日の部活が始まる前に
赤司にその話をした。
赤司は突然立ち上がり、
何も言わずにその場から姿を消した。
練習開始時間になっても彼は姿を表さなかった。