第6章 ブスな私
また、しばらく彼とは会えずにいました。
彼の情報なら、本屋の私なら入って来ました。
店頭に並ぶ雑誌に彼がドラマの主演が決まったとあったから
彼が表紙を飾る雑誌を並べながら
あの夜の事は、やはり私の夢だったのでは?
並べる端から、彼を目当てに雑誌を取っていく
可愛い女の子達を見ては思っていました。
こんな冴えない本屋の店員と、アイドルが友達なんて....
ため息混じりで、並べてると突然後ろから
錦戸「なぁ、盆栽の本が欲しいんやけど」
私は慌てて振り返ると、今日は帽子にマスクで立っていた。
「盆栽ですか?」
私は笑いながら言うと、彼は黙って頷いた。
周りは彼だと気が付いてはいなかった。
私の案内で店の一番奥の人気のない、植木関連の場所へ案内し、
「こちらが、盆栽の本になります」
私が教えると、彼はマスクをとった。
錦戸「ここなら大丈夫やな」
辺りをキョロキョロしながら彼は話した。
「....どうしたんですか?」
私は心配そうに尋ねた。
いつもの彼と何か違って感じたから
錦戸「いやぁ、ただドラマ撮影始まったからOFFなくてさぁ、今日、たまたま早く撮れ終わったから来たんやけど、めっさ声かけられるねん」
私は、そりゃあんだけテレビや雑誌で毎日のように出てたら......
私は心で思った。
「人気者ですもんね」
私の言葉に彼は言った。
錦戸「やっとな....」
アイドルに疎い私は分からなかったのだ、彼らが努力してここまで這い上がってきた事を...
でも、私はその一言に重みを感じた。
私は思い出した、彼が普通に接して欲しい事を望んでる事を....
「で、どの盆栽の本になさいますか?」
私は盆栽の本を探しながらわざと言った。
錦戸「いやいや、盆栽の本はいらんし、あんたの顔を見たかっただけやから」
「えっ?」
私の顔は一瞬で赤くなる
その私の顔を見ると、彼は嬉しそうにいった。
錦戸「また、ご飯を食べに行かん?」
私の心臓は壊れそうなぐらい動き始めた。