第5章 恋心
食べ終わり二人で店を出た。
ゆっくり歩きだした。
私は何も言わずに着いて歩く。
どちらも話さず、静かな沈黙
でも、それが心地よく感じていた。
彼の後ろをみながら
私の知らない世界を歩く彼を思っていた。
しっかりした考えを持ち
自分を持ってて
でも、イタズラ好きな人を...
その時、彼が振り向いた。
錦戸「また、行こうな」
少し照れたような、恥ずかしそうに笑いながら
「えっ、いいんですか?」
私は、まさかの言葉に驚いた。
錦戸「もちろんやで、あんたと居るとなんか落ち着くし」
そう言うと、また私に背中を見せて歩きだした。
「それって褒めてくれてます?」
不安げに尋ねる私に彼は
錦戸「なんやねん、褒めてるやん、居った落ち着くやで?意味わからん?」
少し怒ったのか、私に詰め寄って来た。
「あっ、す、すいません、私、本当にバカだから」
焦ってる私に、彼は呆れた顔で
錦戸「まぁええけど、俺、一緒に居りたくないヤツは多いけど、居りたいヤツはあんまおらんから、その一人やって事なんやけどな」
「えっ?」
錦戸「もちろん、友達としてやで?勘違いすんなよ!」
そう言うとピタッと立ち止まった。
見るとそこは私の本屋の前だった。
彼は何も告げずに、黙って店の前まで送ってくれてたのだ。
錦戸「ほんなら、またな!気を付けて帰れよ」
そう言うと、彼は今来た道を戻り人混みに消えて行ってしまった。
私は、しばらく動けずにその場に立ち尽くしていた。
勘違いって何を?
鈍感な私は全く理解出来ていなかったのです。
でも、確実に胸は痛かった。
一緒にいても痛く....
離れるともっと痛く....
次に会えるのか不安になっていた....
でも、また一緒に食べに行けるという甘い思いだけを胸にしまい、私の心は無駄な恋愛へと動き出してしまったのでした。