第4章 私と彼
すると突然に彼が
錦戸「うわぁ、腹へったわ...何か食いに行かへん?」
一瞬、自分の耳を疑った。
錦戸「良かったらさぁ、俺と飯でも行かん?」
私はその言葉に持ってるカバンを落としてしまった。
その様子に彼は驚きながら
錦戸「おいおい、何やどなんしたん?」
私の心臓が自分でも驚く程に早く動く
「えっ、ほ、本当に、い、いいんですか?」
震える声で落としたカバンをひろいながら私は彼に聞いた。
すると不思議そうな顔をして彼は言った。
錦戸「別にええやろ?友達と飯に行くぐらい」
友達....
アイドルと?
でも、少し心の何処かでその言葉に寂しく思っている私か生まれていた。
「...はい、ご一緒させて下さい」
私は最大限の勇気を振り絞って答えた。
その言葉に彼は、意地悪そうに笑いながら
錦戸「店を離れたらさぁ、敬語やめへん?なんか、くすぐったいわ」
「そうですよね、気を付けます..」
錦戸「気を付けてや、マジで..」
そう言うと、スタスタと歩き出した。
彼の早足に追い付くのは必死だった。
歩いてるとある事に気が付いた。
すれ違う人は、錦戸さんを見て驚いていた。
そして、離れた所で話していた。
確かに、すごいと感じた。
誰もが彼を知ってるのだが、誰も声をかける勇気はない。 そして、そのヒソヒソが凄く胸に刺さってくる。特別な世界にいると知らされる感じ....
彼はこんな世界に生きてると私は感じていた。
錦戸「なぁ、気にせんでええから」
驚いて顔を上げる私に彼は
錦戸「声すら掛けられんヤツはまだマシ、アホみたいに茶化すヤツのが厄介から」
「そ、そうなんですか?」
錦戸「まぁ、こっちが知らん顔してたら、向こうは声かけてこんし、俺だって何も変わらん普通の人なんやけど、職業で注目されるだけなん」
「大変ですね...」
錦戸「あんたもやろ」
驚く私に彼は優しく告げた。
錦戸「あんだけの本の場所を覚えて、客を相手して」
私はこの時に、この人の人間としての大きさを感じてしまった。
この人は、私が本屋の店員だとか、自分が芸能人とか関係なく、人として接してくれてるのだと知ったからだ。
この瞬間から彼を尊敬し始めていた。