第12章 距離
私と錦戸さんとの付き合いは今までと何も変わらなかった。
錦戸さんが来れる時に会いに来る。
それを私が、いつも待ってる関係だった。
携帯も教えてもらってたのだが、正直怖かった。
もし、かけて迷惑になったらと思うから、私からはかけた事はなかった。
LINEもしてくれたけど、面倒くさがりかのか、挨拶と返事だけしか返って来ない
他の人から見たら、素敵な恋愛とは言えないかも知れないが私はそれだけで幸せだった。
彼と会える切符を手にしてる事が、それだけで良かったのだ。
あの事件が起こるまでは.....
相変わらず、錦戸さんは雑誌に載っていた。
私はいつも、彼の名前の文字を見ながら、嬉しそうに仕事をしながら本を並べていた。
どんどん人気がでるなぁって思いながら、少し寂しく感じていた。
でも、一瞬で私の目を止めたのはいつものアイドル雑誌ではなく、週刊誌の方だった。
<<錦戸亮の恋人スクープ・深夜の密会>>
私の手が止まり、微かに震えているのが分かった。
その様子に、一緒に仕事してる男の子が心配して声を掛けてきた。
「先輩、どうしたんですか?気分でも悪いんですか?」
本当は今すぐにでも内容を確認したかった。
私の事がバレて錦戸さんに迷惑をかけたのかもと不安になってた。
でも、お客がいる前で中味を見るわけにもいかず、私は青い顔で、彼に首を振った。
「ううん、何でもないから、早く仕事を片付けようね」
その言葉は、実は自分に言い聞かせてたのかも知れない...
仕事はちゃんとしなきゃと
やっと休憩になり、私はその週刊誌を買った。
中味を急いで見ると
彼とある女優さんと二人で歩いてる写真が載っていた。
時々、楽しそうに微笑んでる写真も大きくされていたのだ。
「.....私じゃない、」
すごくショックだった。
涙が出そうなんだが泣けない自分がいたのだ。
でも、写真の中の二人はお似合いで、恋人って言われても納得出来た。
私と彼との距離を目の当たりにしたのでした。