第3章 シンドリア王国
疑われたくはないが、どうにもシンドバッドさんは警戒心がなさすぎると言うか…まぁ単に私が一般人だから彼の中で警戒に値しない人物というだけかもしれないが。
『あの…食客とは何ですか?』
「このシンドリアに知識・技術を提供すれば衣食住は保障するというものだ!どうだ、悪い話ではないだろ?」
確かに悪い話ではなく、むしろ好条件だが果たして私に提供できるものはあるだろうか。シンドリアという国にメリットを作れるだろうか。
『私に出来ることなんて…』
「異世界の知識を提供してくれないか?」
『…え?』
「話してみたところ、どうやら君の国はこの世界より大分発展している事が分かった。その異世界の知識や話を聞いてみたい」
『それは、全然構いませんが…』
そんな事で良いのだろうか…。
そんな簡単な事なら私としては願ったりかなったりだが。でも本当にそれだけで良いの…?
「決まり、だな。そうと決まれば今日からチサトは我らの家族だ!」
『よ、よろしくお願いします…?』
「チサトさん、変な真似は起こさないように」
ジャーファルさんはまだ警戒しているのか、無表情のまま私に言うと私は首を勢いよく縦にふった。
『でもそんな簡単に決めて良いんですか?この国の偉い人に言わないといけないんじゃ…?』
私のその言葉にシンドバッドさんが口角を上げる。
「そう言えば言ってなかったな。俺はこのシンドリア王国の王だ」
胸を張って堂々と言ってのけるシンドバッドさんに納得した。どおりでその装飾なわけだ。
しかしずっと一国の王と話していたなんて。私の言動に無礼はなかっただろうか?日本にいた頃は偉い人なんかと話す機会がなかったからどうして良いか分からない。
『王とは知らずに数々の無礼を…申し訳ございません!』
頭を下げて深くお辞儀し謝罪する。
するとジャーファルさんから感心された。
「どうやら自分の立場は弁えているようですね」
「チサト、俺は堅苦しいのは苦手だ。どうか普通に接してくれ」
シンドバッドさんに顔を上げさせられると彼の困り顔の目に映り、どうしたもんかと思考するが国王の頼みとあらば聞く他なく、私はその頼みに小さく頷いた。
.