第5章 天才魔導師
眩しい光に少し顔を歪めながら、のそのそと寝心地の良いベッドから起き上がる。
昨日ヤムライハさんに遅くまで魔法のことを教えてもらって、部屋に帰ったまでは覚えているものの、そこからの記憶がなかった。
でもベッドで寝ていたという事は昨日無意識のうちに自分の足でベッドまで行ったのだろう。そうとしか考えられない。
こんな事もあるよねと思いつつ、昨日使った筆記用具を持ち、ヤムライハさんの研究室へ向かうべく部屋を出る。
「…おはようございます」
『お、おはようございます』
部屋を出た瞬間、出くわしたのはジャーファルさん。彼によく思われてないって自覚してるから変に緊張して体が固くなっていく。
「ヤムライハと勉学に励むのは構いませんが、朝食をとってからにして下さいね。その方が頭の回転も速くなるでしょう」
『へ?…あ、はい…』
あれ?なんか雰囲気変わったかも…?私の気のせいかな?なんとなくピリピリ感が抜けたような…。
でもジャーファルさんの言う通り、まずはご飯を食べて糖を摂取しよう。
「一緒に朝食を摂るのは初めてでしょうから案内します」
『はい、お願いします…』
軽くぺこりと会釈して彼の斜め後ろの位置に立ち、着いて行く。どんな心境の変化だろうと思うも、ピリピリされるよりは大分マシなため変な事は言わないでおこう。
そして案内された場所にはシンドバッドさんを始め、ヤムライハさんや他のお偉いさんであろう人たちが席に座って何やら楽しげに話していた。
「シン、連れてきました」
「あぁ、ご苦労だったな。チサト、こっちに来なさい」
シンドバッドさんに呼ばれ恐る恐る側へ行く。部外者がいるからか、先ほど話していた人たちは話すのを止め、こちらを見ている。
「王サマ、この子がそう?」
白い髪に褐色の肌をしたイケメンさんがマジマジとこちらを見ながら何やらシンドバッドさんに確認した。
「そうだ。異世界からきたと思われる子…チサトだ」
周りからの珍しげな視線を浴びているせいか、心臓がバクバクと煩い。
『あの…チサトと言います、よろしくお願いします』
小さく礼をしながら目線だけを周りに向けると笑顔でよろしくと返され、体の固さが取れてちょっとだけ笑顔になれた。
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