第3章 シンドリア王国
「君はどこから来たんだ?」
『日本です』
「…日本?聞いたことないな。ジャーファル、知っているか?」
「…いいえ」
日本を知らないと言う彼らに驚く。
確かに日本は小さな島国だが先進国であるしそれなりに外国でも知名度は高いはずだ。それに身分が高いであろう彼らであれば尚更名前くらいは知っていても良いはず。
『日本は東寄りに位置する小さな島国ですが、世界で3位前後に位置するくらいの先進国なんです』
「…すまないが、聞き覚えがない」
シンドバッドさんは顎に手を当て難しそうに考える。
本当に…知らないのかな。
『…ならこの国は、一体どこなんですか?』
相手が私の国を知らないのであれば、私がここの国を聞こう。それなりに地理や歴史は得意な方だし勉強も嫌いではないから、マイナー過ぎる国でなければ名前を聞けば分かるはず。
私がここの事を問いかけると二人とも少し驚いたような表情で私を見ていた。
「…どこだか知らずに、ここに来たのか?」
『?…気付くとここにいたので…』
またしてもシンドバッドさんは何やら考えだすが、すぐに後ろに控えているジャーファルさんの名を呼ぶと地図を持ってくるよう言い、ジャーファルさんはすぐに地図を持ってきて机の上に広げた。
「君の国はどこに位置する?」
広げられた地図を見ると、唖然。
私が知っている世界地図ではない。
ただ言葉を失うだけであり…。
「……チサト?」
シンドバッドさんの声にハッと我に帰ると、困ったように目の前の彼を見て力なく首を横に振る。
『私の知っている地図ではありません』
「…なに?」
私がそう答えるとシンドバッドさんとジャーファルさんは怪訝そうに私を見る。疑われるのも仕方ないのだろうが、この状況でウソをつくほど私の肝は据わってない。
どうするか考えあぐねていると、フと今自分が卒業式のままここにきた事を思い出す。卒業式前のHRで返された地理の問題集…確かそれには世界地図が載っていたはずだ。
私は肩にかけていたバックからその地理の問題集を出し、机の上に広げる。私のその行動にシンドバッドさんもジャーファルさんも不思議そうに見ている。
『…これが私の知っている地図です』
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