第5章 天才魔導師
side ヤムライハ
今シンドリアで異世界からきたと思われる女性を保護している、と聞いたのは朝にある衆議のとき。
王とジャーファルさん以外…勿論私も何も反応出来なかった。というよりはあまりにも信じれなかった。でもこの世に魔法がある以上、なにが起こっても不思議でないというのも分かっている。
そんな異世界から来てしまった子は魔法が使えるそうだから、私が指導するよう頼まれた。
異世界の子はどんな魔法を見せてくれるのか衆議の時から興奮して仕方なくて、剣術バカに気持ち悪いとか言われたけどそんなの無視よ無視!
そして今、王の執務室に王と二人でジャーファルさんが連れてくる異世界の子を待っていた。
「失礼します」
『…失礼します』
聞こえてきたノック音にそちらを向くと、ジャーファルさんと共に入ってきたお目当ての人物。まだこちらの世界に慣れていないのか、どこかそわそわしているように見える様子が可愛らしくて笑みがこぼれてしまう。
「ではヤムライハ、お願いします」
「はい。もう聞いてると思うけど、これからあなたに魔法を教える事になったヤムライハよ、よろしくね」
『あ、チサトです!よろしくお願いしますっ』
ガバッという効果音が聞こえそうなくらい勢いのあるお辞儀をされて思わず笑うと、どうやら恥ずかしくなってしまったようで、おずおずと元の体勢に戻ったチサトさんの耳は赤くなっていた。
「分からない事があれば何でも聞いてちょうだいね」
『はい、有難うございます!私、魔法の知識とか全然ありませんが精一杯頑張りますのでご指導よろしくお願いします!』
これから魔法に取り組もうという姿勢とその礼儀正しさ、そして微笑みながら言うチサトさんが凄く、凄く可愛らしくて思わず抱きついてしまった。
『あ、あの…!?』
急なことで驚いてるのかな、どうして良いか分からないって感じの様子も可愛らしい!
「仲良くするのは良いが、そろそろ離してやれ。チサトがりんごみたいになってしまっている」
王の言葉で少し離して顔を覗き込むと、チサトさんは真っ赤っかになっていた。
『美人な人に抱きつかれたら、なんだか恥ずかしいですね…』
えへへと笑うチサトさんにまた抱きついたのは言うまでもない。
.