第4章 彼女の能力
あれからシンドバッドから今日はもう休むように言われたチサトは新しい部屋へ案内された後、ベッドに横になりボーっと天井を見つめていた。
考えるのは先程の出来事。
『…魔法、か』
「魔法です」
『!?!?』
自分以外いるはずのない部屋から聞こえた別の声に驚いて飛び起きる。
「勝手に部屋に入るのは気が引けましたがノックをしても返事がなかったもので、すいません」
『い、いえ…』
どうして自分の部屋に来ているのか分からず、立っているジャーファルを見つめるチサト。
「明日、あなたにある魔導師を紹介します。魔法のことはその方に聞くと良いでしょう」
『分かりました』
きっとシンドバッドに言われたのだろう、ジャーファルから明日の事について簡潔に用件を伝えられる。しかしジャーファルはその場から一向に動かない。
それに不思議に思って小首を傾げるチサトを一瞥したジャーファルは軽く咳払いをして目を伏せる。
「…先程の、ジュダル奇襲の件ですが」
『は、はい』
「……あの件であなたが敵でない事は分かりました」
『!!』
ジャーファルから紡がれた言葉に疑いが晴れたと思い、一気に顔を明るくするチサトだが、それも次の言葉が発せられれば項垂れる事となる。
「しかし、怪しい人物である事には変わりありません」
『…そんなぁ』
「…引き続き私はあなたを警戒しますが、この王宮内でしたら自由にして頂いて構いません」
『!有難うございますっ』
警戒に値する人物に変わりないと言われ、少しショックを受けたチサトだが当初に比べればその警戒も弱まり、その事には素直に嬉しいため、自由行動のお許しが出れば満面の笑みでお礼を言う。
「それでは、失礼します」
チサトの反応に対し、フッと小さく笑みを浮かべたジャーファルは会釈した後静かに部屋を退出する。
チサトは初めて向けられたジャーファルの笑みに何故か胸がきゅっとなったのを感じた。
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