第4章 彼女の能力
「…今のはなんです?」
『わ、分からないです…ただ、治れって強く願ったら先程のように…』
二人の間に沈黙が走る。
チサトは自身の身で起きていることに恐怖よりも嬉しさの気持ちが勝っていた。これなら恩返しが出来るかもしれない、と。
「シンに報告します。先程のこと、ご自身で説明できますね?」
『…は、はい』
先程の防御といい治療といい…ただでさえも疑われているのに更に疑われるような事になってしまった事にチサトは小さく唇を噛む。
ジャーファルは砂埃を払い王の部屋へ行こうと歩みを進めるとチサトもそれに続いて、若干俯き加減で着いて行く。
チサトの部屋のドアを開けようとジャーファルがドアノブに手をかけようとすれば、それより先に何者かによりドアが勢いよく開けられた。
「なんの騒ぎだ!?」
先程の物音に駆けつけてきたのだろうか、少しばかり息が弾んでいるシンドバッド。目の前に立っているジャーファルとチサト越しに見えた部屋の惨状を目の当たりにすると眉を寄せる。
「……ジュダルです」
「なに!…くそ、これでアル・サーメンにチサトの存在が知られるのも時間の問題だな」
「それと、チサトさんの事ですが…」
「なんだ」
「…マギ同等のボルグと治療魔法のようなものを使えるみたいです」
「!…それは本当か、チサト」
『よく分かりませんが、攻撃を受けても何か球体みたいな膜のもののおかげて無傷で済みました。治療に至ってはただ、治ってほしいと強く願っただけであって…』
チサトの説明にシンドバッドはふむ、と考える素振りを見せる。
『私は、一体何なのでしょう?』
「…それを断定出来る言葉は今は見つからないが、チサトは魔法が使えるみたいだな」
『魔法…ですか』
「そうだ。最初に君は白い鳥を追ってきた、と言っていたがその鳥はそもそも魔法使い気質の者にしか見えない。そこで、だ…君がそれ程までに魔法の才があると分かった以上、知識を養ってもらいたい」
分からない事だらけなチサトにとって、知識を得られるのは好都合なため、シンドバッドの言葉には迷うことなく頷いてみせた。
そんなチサトの様子にシンドバッドは緩く微笑んで、頭を撫でた。
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