第1章 サプライズデート
フィナーレが始まる。キャラクター達も歌手の人もダンサーさんも舞台へと集まる。歌手の人達がショーのテーマソングを歌い、キャラクター達とダンサーさんが踊る。感動的なフィナーレ。だけど私には見えていなかった。さっきからずっと、視界は歪んだままだ。頬を温かいものが伝う。テツヤ君がそっと抱き寄せてくれた。ああ、私泣いてるんだ。ショーが終わるまでずっと、私は泣き続けた。
客電がつき、観客が退場している間、テツヤ君は私が落ち着くのを待っていてくれた。とはいえあまり長くはいられないから、泣きはらした顔を隠しながら外へ出る。外は雪が降っていた。
穂波「ホワイトバレンタインだね」
黒子「そうですね。冷えますからどこかで温かいものでも飲みましょうか」
どちらからともなく手をつなぎ、近くのレストランで紅茶を頼む。甘めのミルクティーにした。一口飲んで、テツヤ君にお礼を言う。
穂波「今日はありがとうテツヤ君。すごく素敵なショーだった。本当にありがとう」
ありがとうしか言葉が出てこない。ちゃんと感謝を伝えたいのに。こんな時自分のボキャブラリーの少なさに腹が立つ。
黒子「僕の方こそお礼を言わなくてはいけません。さっきは一緒に立ち上がってくれてありがとうございました」
穂波「え?なんでそこでテツヤ君がお礼を言うの?」
黒子「穂波さんああいう目立つことはあまり好きではないと思ってました」
穂波「確かにちょっと恥ずかしかったけど、でもそれ以上にすごく嬉しかったよ私」