第1章 サプライズデート
客席を見渡すとやっぱりカップルが多い。「バレンタインナイト」だもん、皆大切な人と来たいよね。なんだかドキドキしてきた。私がステージに上がる訳でもないのに何を緊張してるんだろう。落ち着こうと思ってテツヤ君に話しかけようとしたら、彼はとても緊張した顔をしていた。え?なんで?もしかして私の緊張が移ったの?
穂波「テツヤ君どうしたの?何かすごい緊張してるみたいだけど」
黒子「すみません、僕、実はこういうショー観るの初めてなんです」
穂波「そうなの?でも別にテツヤ君がステージに上がる訳じゃないんだし…」
自分のことを棚に上げて笑ってしまった。テツヤ君も笑う。緊張は解けたみたいだ。テツヤ君てばかわいいなぁ。何千人もの前で堂々とバスケしてる時とは大違い。
黒子「そろそろ始まるみたいですね」
客電が落ちてアナウンスが流れる。オーケストラの人達が席に着く。ヴァイオリンを持った女の人が一礼して席に着くと、チューニングが始まる。指揮者のおじさんが一礼して指揮台に立つと、緊張感が高まる。演奏が始まると、白人の男の人が現れた。英語で短く挨拶すると、女の人が2人と男の人が1人現れて皆で歌いだす。ジャスを何曲かメドレーで歌うと、舞台袖へとはけていった。
曲調が変わってキャラクター達が現れた。映画のワンシーンを再現するかのように歌い、踊る。キャラクター達は入れ替わり立ち替わり現れては歌い踊る。そして全員が舞台上に揃うと、舞台の両端にある階段から客席に降りてきた。客席の間の通路を通り一周ぐるりと回ってまた舞台へと戻っていく。私の横を通る時、ダメ元で手を出したら皆ハイタッチしてくれた。すごい!すごい‼︎嬉しくてテツヤ君の方を見ると、優しく笑っていた。