第1章 まずは疑いましょう
駆け引きは嫌いだ。
人間は信じるべきものなのに。
…でも、こんな状況ではきっとそんなこと言っていられない。
【02 ここは、どこ】
「私の立てた仮説は3つ。
①ここは私が通っていた中学校そのものである。
②ここは私が通っていた中学校によく似た学校であり、現実に存在するどこかである
③ここは私が通っていた中学校によく似た学校であり、どこか異世界に存在する不思議ワールドである」
「…ここは君が通っていた中学校だと言うのかい?」
「全部見た訳じゃないけど、ここまで通ってきた感じではここは私の母校だね」
「ちなみに、住所は」
「宮城県仙台市にある公立中学だよ」
「…そうだとすれば、僕はわざわざ京都からここに誘拐されたということか?他の全員も」
「誘拐だとすれば、私も仕事帰りに東京から拉致られたってことになるかな」
軽い口調でやり取りを交わして、私はカバンからスマホを取り出す。
電源をつけ、電波を確かめ、適当に発信して、諦めた。
「…電波は立つけど通話は不可能か」
「ちなみに、メールやインターネットも無理だった」
「流石に調べてるね。固定電話は?」
「不通だ。一応ここにあるのは全て試したが」
「職員室の左隣は校長室だったと思うけど、そっちは?後、右隣の給湯室の奥にある和室にも電話あったかもしれない」
「どちらも不通だった」
「そっか…」
んー、とうなりながら、私はしかし、と自分の中で軽く結論をつける。
スマホの時計は狂っていた。
テケテケが現実で追ってきた。
外の誰とも連絡を取れない現状。
…そして、目の前にいる彼等という存在の違和感。
沈思する私に構うことなく、赤司は質問を重ねていく。
「①は分かった。②の意味は?」
「単純に、私の学校はまだ廃校じゃないから、校舎内に一切人がいない状況がおかしいと思っただけ。まだ太陽も出てるのに」
「…一斉下校だという可能性は?」
「それでも、教師は残るはず。それに一斉下校させられても、運動部は普通に外で活動してた。見える範囲に人がいないなんておかしいし、後…あぁ、」
私は思わず宮地さんを見てしまう。彼はん?と首を傾げた。
「窓ガラスをゴミ箱が突き破ったのに、一切騒ぎにならないのもおかしい。住宅街のど真ん中にある学校なのに」