第1章 まずは疑いましょう
結局私は、違和感を拭いきれないまま3人について行っていた。
彼等3人の他にも複数人いるらしく。私はもしかして:もしかしなくてもというお決まりのあれを脳内で繰り広げる。
…いや、実際ご対面する前に心構えは必要だと思う。下手したら、怪談以上に。
【01 かおあわせ】
連れてこられたのは、本校舎1階にある職員室だった。
ちなみに校舎の説明をしておくと、先程私がいた西校舎と本校舎は渡り廊下でL字型に繋がれている。校舎の大きさはどちらも同じ程度。
そして西校舎側の端には武道館が続いており、本校舎側の端には体育館が続いている。プールは西校舎の屋上にあり、屋上は西校舎本校舎共に鍵がかかっている為普段は入れない。
…もしかしなくても、職員室にいるのは放送設備と全施設の鍵が揃っているからなのだろうか。
だとしたらまとめている人物は優秀すぎる。
がら、と宮地君がドアを開けて、「戻ったぞ」と言う。
続いて入った瞬間、室内のカラフルぶりに目を奪われた。
赤、青、黄、紫、水色、赤黒ツートン、灰色…
…あぁ、これは。
「…誰だそいつ?」
「襲われてたんだよ。知り合いじゃねぇけど、見るからに人間だろうが」
「危なくないっすか!?せめて縛るとか…」
「抵抗もしていない、化け物に襲われていた女性を問答無用で縛るというのか、馬鹿め」
「あぁ、それは頂けないよ涼太。まぁ、彼女への警戒心は持つべきだろうが」
「赤司、お前の言い方もねぇよ」
「当然の対処だ。何せ、今ここにいるのは彼女以外全員知り合い。しかも彼女だけ明らかに年齢が異なるだろう」
赤と金のオッドアイに射抜かれ、私は緊張する前に、あぁ、なんて面倒なんだと嘆息する。
「現時点で、一番怪しい存在だ」
「…黙れ糞餓鬼」
反射で出た言葉に、あ、やべ、と思う間もなく、周囲の緊張度が膨れ上がる。
あー、もう、自分で温度上げてどうすんだよーと思いつつ、適当な椅子を引き出して座った。
…確かこの席、私の好きな国語の先生が使ってた席だったな。
「…阪本紫苑」
「何?」
「私の名前。このままだと、お前とか君とかそこの、とか呼ばれかねないから」
「そうか。僕の名前は赤司征十郎だ」
「ご丁寧にどーも。でも、気を付けた方がいいよ」
きょとんと瞬く綺麗な瞳を見据えて、私は薄く笑った。