第1章 まずは疑いましょう
<「テケテケ」に切られたものは、次の「テケテケ」となるーーー>
それだけはごめんだ、と、咄嗟に舌を噛み切ろうと力を込め…
「伏せろ!!」
鋭い声と同時、頭上をものすごいスピードでゴミ箱がかすめていき、テケテケに見事にぶち当たり、テケテケごと窓ガラスを破って校舎の外に飛び出していった。
…今、何が、起こったの?
唖然とする私がのろのろと身を起こしていると、騒がしい足音がこちらに走ってくる。
目をやれば、背の高い少年達(私にとっては高校生くらいまでは少年だ)が、心配そうな顔で私に駆け寄ってくるところだった。
見覚えは、ない。…ない、はず…
いや、まさか…そんな。
ある意味先程よりも更なる混乱に叩き落されている私の様子をどう取ったのか、一番先に私の元についた黒髪の少年が爽やかな笑顔で手を差し出してくれる。
「大丈夫ですか!?怪我してない?切られてない?」
「あ…はい、大丈夫、です。助けてくれて、ありがとう…」
「あ、それは宮地さんに言ってください!ゴミ箱ぶっ飛ばしたの宮地さんだからww」
「何で笑ってんだ高尾、轢くぞ」
「ちょw何でそうなんですかテラ理不尽www」
宮地。高尾。
回らない頭で、差し出された手を取って立ち上がると、緑色の髪の少年がぶっきらぼうにウエットティッシュを渡してくれる。
「顔や腕に汚れがついているのだよ」
「あ、りがとう」
「いやーん真ちゃんやっさしい!」
「黙れ高尾」
真ちゃん。緑色の髪。
震える手でウエットティッシュを抜出し、腕や足の汚れを拭いていく。幸いにもタイツは破れなかったけれど、ずきずき痛むから、打ち身が増えたかなと思った。
おかしい。
おかしい。
差し出された手も、目の前で話す3人の存在感も、確実に「生きている人間」のそれなのに。
でも、だからこそ、違和感が。
だって、彼らは。
…漫画の中の住人のはずだと、言うのに。
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