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【黒バス】夢と現実の狭間で【ホラー】

第1章 まずは疑いましょう



幼い頃から、この目には人ならざるモノが見えていた。

例えば、上半身だけで地を駆ける女。
例えば、放課後の教室にしかいない少年。
例えば、焼け焦げたフランス人形。
例えば、枕元に立ち厄を告げる狐。

それを理解してほしいと思うことは割と早々に放棄したし、それでも時々は信頼している人に話もした。

しかし、今、この年になって。

…こんな場所に放り込まなくてもいいでしょう、神様。


【00 はじまり、はじまり】


走る。走る。
脱げやすいパンプスは蹴り捨てて、古びた校舎をひた走る。
タイツで滑りそうになるたびに心臓が冷え、同時に迫る恐ろしい声に必死で聞こえないふりをする。

「エサエサエサエサエサエサエサァァア!!!!」

鎌を振り上げ迫ってくる化け物相手に、私は逃げることしかできない。

会社帰り、気が付いたら、「ここ」にいた。
構造は分かっている。多分。かつて私が通っていた中学校だ。
2つの校舎を繋げたL字型の校舎は、片方がとても古くて怪談話も山ほどあるような校舎で。
そして私は、学生の頃に見聞きし、実際に遭遇も仕掛けたその「怪談」と、今、実際にご対面しているのである。

<西校舎の4階には「テケテケ」が出るーーー>

何故、東京にいたはずの私が遠い地元の中学校にいるのか。
何故、いきなりテケテケに追いかけられているのか。
そもそも、ここは本当に私の通っていた中学校そのものなのか…

そんなことを考えたいのに、考える余地もないまま私は走り、西校舎から本校舎への渡り廊下を駆け、90度に折れ曲がった廊下をイニシャルDのようにターンした。

テケテケは曲がり角に弱い、という俗説を試してみたんだけれど…と、振り返るまでもなく、追いかける声は変わらず迫ってくる。

テケテケって対処方法あったっけ…!?と、酸欠気味の頭で考えるもまともな案は出てこない。
しかも、元々文化系である私の足はそろそろ全力疾走に耐えられなくなりそうだった。

やばい、と思った瞬間、汗で湿ったタイツが、ついにリノリウムの床を滑る。

「いっ…」

まともに受け身も取れずに全身を叩きつけられ、立ち上がれない。
必死に振り返れば、嬉しそうに嬉しそうに笑ったテケテケが、私の頭上で鎌を振り下ろさんとしていた。

<「テケテケ」に切られたものは、次の「テケテケ」となるーーー>
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