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【黒バス】夢と現実の狭間で【ホラー】

第1章 まずは疑いましょう



「…今ここで、君が僕達にそんなことを言ったところで、理になることは何もない。何故、漫画のキャラクターなどと言ったのか、教えてもらえるだろうか」

私は小さく苦笑して目を伏せる。

「君達のことを知ったような顔をしたくなかったからかな」

「黙っていたら、ちょっと疑われるくらいで済んだかもしれない。でも、いずれボロは出ただろうし。それに、私が知っているのはあくまで漫画の中の君達だから。現実に生きている君達と接してるのに、それを作り物扱いしたくない。ここで知り合ったなら、ちゃんと自己紹介して知り合いたい」

「傷つくようなことを言ったかもしれないけど、私は君達を漫画のキャラクターと思いたくない。だから教えた。…そんなところかな」

沈黙が落ちる。再び。
でも今度の沈黙は、なぜか少しだけ前よりは軽い気がした。

部屋の奥にいた水色の髪の少年が、周りの制止を抑えて赤司の横に立つ。

綺麗な空色。澄んだ瞳。無表情なのに、どこか温かい不思議な雰囲気。

「…初めまして、黒子テツヤです」
「…どうも」
「…正直僕はまだ、僕が漫画の主役だったと言われても実感が湧きません。納得も…できていません」
「…」
「ですが、あなたの言葉に嘘はないと思います。あなたはまっすぐだ。不器用な程に」
「…予想外の褒め言葉なんだれど」
「そうですか?思ったままですよ。…ですから、僕はあなたの言葉を信じます。全て」
「おい、黒子!?」
「テツ!!」

何人かが叫ぶ。赤司ですら驚いた顔で黒子君を見ている。
しかし黒子君は、全く動じずに言葉を続けた。

「ここが異世界であること。僕等は別々の世界で生きる人間であること。あなたの世界では僕達は漫画になっているけれど、それと混同しないと言ってくれたこと。…あなたは、僕達を人間だと認めてくれているんでしょう?知り合いの1人もいない空間で、本当は一番不安になる立場なのに」

高尾君が息を呑んで私を見た。

黒子君の静かな言葉だけが響く。

「僕もあなたを人間だと認めます。悪い人ではないと判断しました。…一緒に帰りましょう、阪本さん」

私は呆然と、黒子君を見上げた。




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