第1章 まずは疑いましょう
狂った時計。
具現化した学校の怪談。
人気のない校舎に集められた私達。
彼等という存在。
【04 せかいのろんり】
「さっき君達を漫画のキャラクターだと言ったのは、何も喧嘩を売りたかった訳じゃないよ。むしろ、この場所で会ったからこそ私の中で繋がった論理なんだよね」
「…つまり、君は最初からこの場所が現実ではないとほぼ確信していたということか?」
「そうなるね。私の母校に意識の乱れもなくいきなり飛ばされ、移動距離は東京仙台間なのにその記憶もない。あげく当時の七不思議に全力で追いかけられ、携帯も固定電話も通じない。他に人がいる気配もない。ここまでで私は、ここが現実世界ではないと判断した。残る可能性としては、異世界に飛ばされたか、眠っているか、何らかの事情で昏睡状態になり幻覚を見ているのか…てあたりだけど、後者二つについては放っておいてもどうにかなるから問題ない。としたら、意識もあって自由に動ける私は、ここが異世界だと判断して脱出の為に動くべきだ。…こんなところかな」
「壮大なドッキリの可能性は?」
「殺されかけたのに?」
「…そういえば、君は襲われていたんだったね。何に襲われていたんだい?」
「西校舎4階のテケテケ」
「襲われてたことについては、俺も保証するぜ。赤司」
寄り添うように近くに立っていた宮地君が口を挟む。
驚いて見上げると、切れ長の瞳が誠実に私を見下ろしていた。
「あの時は鎌で切られそうになってたあんたを助けるのに必死だったけど、確かにあれは下半身がない化け物だった。下半身がない人型の、鎌持った化け物ってテケテケ位しか知らねぇな、俺は」
「そう何種類もいてほしくないけど…あの時は、ありがとう」
「いや」
少しだけ、宮地君が笑う。
赤司は僅か、考えると目を私に戻した。
「君がここを異世界と判断した論理には、まぁ、納得しよう」
「それで、僕達を漫画のキャラクターと判断した論理はどうなっているんだい?」
私は少し躊躇い、ゆっくりと口を開いた。