第1章 穴無き穴と仲間達
「怒ってすいません・・・。その、岩鳶高校ならあったんだけどそれ以外はもう住宅街でして・・・。」
「それ。」
「は?」
「それがうちの高校。」
え。
じゃあ私が溺れていたのって、その岩鳶高校ってこと!?ー・・・そうなる。それしかない。でも私が行ったのは確かに自分の学校のプール。というか、自分の記憶が途切れたのはプールの中なんかじゃない。更衣室内のシャワールームだった。2人はわけがわからないという顔でお互いを見合わていた。
蒼白として行く私の顔。蝉の音と冷たい汗が流れた。風がふくと私の体が白くなっていく感じがした。
この状況を作るには、誰かが殴りでもして私をその高校に連れてプールに放り込むなんて所業をしなきゃならない。自分でもどこか信じがたいと思っている。でもどうやってこの状況ができたかわからない。
とりあえず、家に戻らなきゃ。
「地図、地図ってある!?」
七瀬君にそう言うと、彼は黙って部屋へ戻った。
何故か焦りを感じる。早くしなければいけない。誰かに命を狙われている・・・?まさかそんな。水泳部で私を邪見とするものなんているわけがない。邪魔かもしれないけど選手たちに関与はしていない。狡いマネもしていない。
(落ち着け、なんで命を狙われてるなんて考えるんだ・・・。今おかしいのは、私が見ず知らずの場所に移動しているってことだ・・・。)
「あの、大丈夫・・・?」
さっきまで無視し続けられていた彼を見る。こちらもがたいがいい・・・って今はそんなこと考えている余裕ないぞ!!
「多分・・・大丈夫、です・・・。」
「笑えてないよ、引き笑いになっちゃってるよ・・・。」
精一杯強張る口元をあげてみるが、うまく動かせない。
「そういえばどうしてハルを知ってるの?ってかそれハルの服だよね?」
「昨日、信じられないんですけど自分の学校のプール忍び込んでたら気付くとなぜか、岩鳶高校でしたっけ。そこのプールで溺れていた所を・・・。」
そこでガラリと引き戸が開けられる。七瀬君の差し出す地図をひったくるように忙しなく動く。自分の住所である位置を指差し見てみると、思いもよらぬ展開が待っていた。
ー・・・そこに、家はなかった。寧ろ住宅街すらない。