第1章 穴無き穴と仲間達
「なんで・・・。」
開かれたページを2人も覗く。背の高い栗毛の少年が、
「ここ、ショッピングモールだよ・・・?」
「そんなとこに住んでるの。」
いやそこじゃないよ七瀬君・・・。しかし言葉は出ず、心の片隅で思うだけで唖然とする。
どういうこと?確かに家はここにあるはずなのに。
考えられなくなって行く。というより、考えすぎてわけがわからなくなってきていた。
「あの、どうしたの・・・?」
心配そうに顔を覗き込んでくる栗毛。
「家が・・・家が、家が無いんです・・・!」
「え。」
「どうしよう、え、なんで!?なんで・・・。」
熱いはずのアスファルトをも気にせず、脱力して座り込む。
どうすればいいかが全くわからない。浮遊者・・・?まさかこれからホームレス生活?今お金も無い。一文無しだ。え?どうすればいいの。
「あ、ハル・・・学校の時間・・・。」
栗毛は少し決まりが悪そうに呟いた。バッチリ聞こえている。その言葉で家にまた彼は戻る。
すると栗毛がしゃがんで私を呼んだ。優しそうな微笑みを共に、口を開く。
「うちの学校の先生にでも相談してみようよ。大丈夫だからさ、ね?」
大天使に見える。ドキッとする。これがときめきというのか、いや、おそらくこれは彼の徳の高さからくる心臓の高鳴り・・・!神は存在したのだ!
(おお、おおおお・・・!救い!光!)
と、若干新興宗教的になって来たところで泣きそうになる理由が変わってきた。うるりとし出す目をぐしぐし吹いて彼の手を思わずとった。彼は「へっ・・・?」と小さく出すと、目をパチクリさせる。
もう、感謝でつきない。
「あ、ありがとうございます・・・!ほんと・・・!」
「そんなに、切羽詰まってたの?・・・まぁそうか。そういえば、君名前なんていうの?」
「陽野妙美と、言います!」
「よろしく。俺は橘真琴。」
改めて手を差し出され、私は両手でその真琴様の握手に応じる。だらしない笑顔を見せてしまった。でも今は嬉しさがそんなことを忘れさせ、彼の大きな手をただ握り返し続けたのだ。
そうこうしているあいだにも、七瀬くんは制服に着替え外へ出てきていた。その熱烈かつ一方的な握手を見て何してるんだと言いたげであったが気にしない。真琴様が困ったように彼に笑って応対してても気にしない。気にしない。