第1章 穴無き穴と仲間達
「かっこいい・・・。」
「は、はぁ?」
唐突に私が賞賛するような事を口走ったせいか、彼は意味がわからないと言いたげだった。
「それ小さい頃からなんですよね?」
「まぁ、・・・だからなんだよ?」
「いやすごいなぁって。」
「だから何が?」
「私もよくわかんないんです。さっきまで実はちょっと軽蔑してたんですけど尊敬しました今。」
「あのなぁ・・・一言余計で腹立つんだよ。」
「えー、今人に尊敬されてるんですよ?素直に喜んで欲しい。」
彼は不服そうな顔をしていたが、段々頬を染めらせるとそっぽを向いて、
「・・・・・・・あんがと。」
と礼を言う。
ツンデレなんですねぇわかりました。(アホ)
そんな彼を微笑んで(※ニヤついて)見ていると、そそくさと立ち上がった。
「もう俺は帰る。・・・てめぇも早く帰れよ。」
「はい。ありがとうございました、ほんと・・・。練習頑張ってください!応援超します!」
絶対乾いてないであろうしけたままのTシャツを着て、砂浜から去ろうとする。
ひ、広い背中やん・・・。真琴君は元々体が大きいから、彼の背中も大きくて上がる口角を抑えるのに必死になったが・・・鍛え上げられて広くなった背中もまた・・・。
あれ、江ちゃんに毒されたのかな私。
口がヒクつくのを必死で押さえていると、彼はチラと私の方に振り返った。
「・・・・陽野、だったか?」
「えっ、あ・・・はい!!そうっす!陽野っす!!!!」
「・・・きめぇ。じゃあな。」
あのさぁ感動の別れをさぁ・・・・。
「・・・・・・あんたも一言多いのよ!!!」
「お互い様だろうが!」
仲良く、なれ・・・・た、のか・・・・・な??
私も砂浜を後にする。
冷たいコンクリートを歩き始めた。
夢だから泳ぐ、かぁー。
私は何で泳いでいたんだろう。
タイムを良くするため?
じゃあ、なんでタイムを良くしたいの?
そうだ、本当は大会に出て皆を見返してやりたかったんだ。
でも、突然私の目の前にそれは消える。妬みと虚栄は思った以上に私を殺そうとしていた。