第1章 穴無き穴と仲間達
「・・・悪かったな。」
「いやいやいやそれはなんていうか私も悪いとこありましたしお互い様というか!!!」
「てめえ本当に江が言ってる奴か?」
「へ?多分あなたが聞かれてるのはそうだと思いますけど・・・。」
なぜと問うともっと大人っぽいと聞いていたらしい。
うん、とりあえず次江ちゃんとあった時だいぶ大人びてないといけないと意識しまくって逆にひどい目にあいそう!もう笑顔ながら吐血しちゃいそうだよ私!
彼は未だその顔から眉間の皺を消さないで、ちょっとだけ照れ臭そうにしている。さっきまでずーーーっと剣幕しか見せなかったため、彼にばれぬようちょっと笑う。
思えば、散々酷いこと言った人間が死にそうになったら助けてくれるほど彼は優しいのかもしれない。
・・・って、人が溺れているのに見捨てて殺す人の方が中々いないか。
でも来てくれたって事は、音を聞いて何とかせねばとは思ってくれたわけだ。
人に任せるわけでもなく自分で悪態つく私を助けてくれた。江ちゃんや似鳥少年が慕う理由がわかると共に心が優しく暖まる。
っつうかこれいい感じだし仲良くなるチャンスじゃね!?
・・・いやまぁ彼と無理に仲良くなる必要性はあるかっつったらそこまでだけど仲悪いよりはましだ。
「あの。」
「あ?」
ひぃぃいいい。
しかしその声に負けじと、言葉を繋げた。
「凛さん・・・ですよね?」
「あぁ。」
「実は気になってたことが、ありまして。」
「は?」
「オーストラリアに留学して、強豪校にまで入るほど競泳選手になりたがってるって、江ちゃんから聞いて。どうして、競泳選手になりたいんですか?」
それは単純な疑問だった。いやでもこの質問なら怒られないと思ったし。
彼は最初は私の方を向いてキョトンとしていた。
え?地雷?まさか私地雷踏んだ??????
しかし途端に真剣な表情を見せまた海を眺める。
「・・・夢だからだ。」
ボソリとただ、それだけ言った。
尖るように力強く勇敢そうな眼差しが、海から反射される淡い光をもって輝く。
彼のその横顔に圧巻されたのだ。
・・・夢だから。その顔から想いの大きさがはかられる。
「すごい・・・。」
もしそれが周りの人間が言うように幼い頃からのものならなんて、