第1章 穴無き穴と仲間達
あの時見た景色は言っていた。大丈夫と。
その意味は実はよくわからない。でも確信できたのは、もう逃げようとはしないことだった。
私はこっちに来て水を見て倒れた。疲れとかそういうものだと思ったけど多分ちがう。
そして優しい人々と接していくうちに不安みたいなものを消し飛ばせた。でもそれは一時的急剤に過ぎなかったのだろう。
私は変に焦り続けたままだった。
七瀬君や凛さんはそんな私を見ていたとするなら、
「なんて酷いこと考えてたんだ・・・。」
確かにそこに優しさや親しみなんて無かった。
嫌われたかもしれないけど、それは私の行いの結果だ。彼らは極悪人なんかじゃない。
とりあえず今心にあったのは、あのサメみたいに泳げないかなという憧れだった。
なんで?わかんない。しかしのしかかっていた何かは消えて、私は今向き合っている。
また、泳ぎたいと思うのだ。
「本当に嫌いなわけじゃなかったや。」
***
あいつは、いつの日か前の俺に似ていた気がした。
手も足も出ないほど、どうすればいいのかわからない。違いといえば俺はがむしゃらにもがいたけどあいつは、それをするにはあまりにももろ過ぎた。
勿論最後らへんの言葉は殴ってやりたくなるくらいに腹が立ったが、何もできなくなってしまった。
あいつに何かあった時、似鳥を先に帰らせてそっちへすぐ向かった。
慈悲じゃない。あいつには腹が立っていた。でも体は勝手に動いた。まぁ良心とかいうのに近い。
そしてあいつは俺の助けを、俺の泳ぎを、まるで綺麗な景色を見たように目を輝かせていた。
海中の中その輝く瞳は明らかに、俺を悲しそうに憧れていた。