第1章 穴無き穴と仲間達
「えーっと・・・その・・・。」
「あ゛ぁ?」
「いやマジなんともないっすすんません。」
砂浜の上。
びしょ濡れの服を仕方なしに絞ったりはたいたりして見ながら、明らかーーーーに機嫌最悪そうな彼の様子を横目で伺っていた。
私は溺れて軽く別世界を見かけていたみたいだが、彼が助けてくれて砂浜まで運んでくれたのだ。私は彼が海面上に私を引き上げた辺りで幻のサメから動物の人間食べるサメと極悪ヅラの鮫男を思い出してしまい、暴れながらに気がついた。
い、いやぁーーーー私の神経どうなってるのかしらーーーーーー。(焦)
暴れるって、挙句『うわぁぁあああああやだぁぁぁぁああああ!!!!』って。
パニックに陥るって、どういうことなの。
「えっと・・・よくよく考えたら、さっきの逆ギレになりますよね私・・・。すいません・・・。」
彼は上のトレーニング用らしきTシャツを脱ぎ、前髪をかきあげながら海を見回している。
そこでちょっとかっこいいとか思う私ってホント呆れるほどマヌケなのかもしれない。(絶望)
江ちゃんが筋肉フェチな要因を見た気がした。でも本当1番鍛えてる感ある筋肉・・・。
「あと、さみしがりだのどうのいって・・・すいません。」
「喋りかけてくんじゃねぇ。」
・・・・はい。(震え)
それにしてもどうして立ち去らないのだろう。あそこまで色々言われて、あ、案外神経図太いのはお互い様だったりして・・・。
沈黙の末、口を開いたのは意外にも彼だった。
「何が見えた。」
「・・・は、はい?」
「なんか見ただろ、海の中で。」
「えっと・・・何、とはなんでございましょうか・・・?」
「いいから答えろ。」
段々声にドスかかってきてるぅううううう。
私は慌てて、見たままを話した。
「ききき綺麗な、サメです。星空を泳いでました。すっごく優雅なんだけど力強くて、すっごくかっこよかった・・・・ッス・・・・。」
これで、いいのか・・・?笑われないだろうか、今だと少し笑われるようなことをするだけで足元掬われる気がして怖い。
再び恐る恐る彼の顔を伺う。
しかし、そこにはあの睨みつける鋭さも怒りもなく、どこか気まずそうな顔があった。
「え、あの・・・?」