第1章 穴無き穴と仲間達
「それに私だって真琴君からあんたのこと色々聞いてんのよ!?自分が寮生活でだーーーーーーいすきな人達と会えないからって突然親しげな私に嫉妬ですか醜い女々しくて女々しくてつらいわ!!!!!!本当はあんたちょっとさみしいだけでしょバァァァァアアアアアアアアアカ!!!!!!!!!!!!!」
最後は明らかにただの暴言。
でも口から一度流れ出した熱達は吐き切れるまで口を閉ざすことを許さなかったのだ。
私の息切れの音だけが、夜の波風とともに運ばれて行く。
彼は私の言葉を全て聞くと、何も言わずに踵を返して似鳥少年とその場を去って行った。
彼の顔は終始しっかり見ていない。
そんな余裕なかったし、見れば殴りかかることこの上なかったからだ。
地面に足を踏みしめながらさっきまで奴らが居た堤防の先までしっかり歩く。
波の音は爽やかにひびき、星は輝くというより燃えるように見えていた。
そう、私は逃げている。
今、逃げているのだ。あっちの世界でどれだけでも立ち向かったはずのものに。心の何処かに隙間風が吹いた。
私は缶ジュースを全て即座に飲み干して冷たいコンクリートに転がらないよう横たわらせる。
そして海に背を向けて、奴がいた方向をジッと見た。狙いを定め、あの憎き鮫男のシルエットを闇に浮かべる。
そしてー・・・・。
「おっ!!!!!!・・・りゃ、りゃ、りゃぁぁぁあ・・・・?」
缶は、丸い。
見事に空振りし、その丸さゆえに足を滑らせバランスを崩す。けんけんぱの要領で、滑っていない方の足でバランスを整えようとして、
海に落ちたのだった。
***
満天のお星様。
そこはいつもより綺麗な場所だった。
・・・あれ、懐かしい声がする。
何?なんて言ってるの?大丈夫?は?何のこと?
あーそれにしても綺麗だな星空。闇夜の海中に差し込む光達。そこはまるで現実と違った。
そこに、突如無数の泡が現れる。ちょっと・・・邪魔だなぁ。
こんなに気持ちいい世界にいるってのに・・・。
しかし泡から現れたサメは優雅に体を動かしながら私にどんどん寄ってくる。
(おおおおおお!!!!!)
星空をサメが泳いでいた。
力強く鋭く、時に華麗に。
・・・ってサメ!!!!?????
***